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2010年7月26日 (月)

第4回リレートーク『写真撮影は心に汗をかくこと』

田中宏明会員の写真観

Hpp7014137_3 第4回目のリレートークが7月1日に開催された。担当は田中宏明会員だ(写真左)。ライフワークである富士山写真のアルバムなどを提示しながら、その撮影現場で得られた写真に関する体験とノウハウをお話しいただいた。独特の写真観からは、多くの含蓄ある報告と提言が展開された。一部を省略し、かつ要約したので、話の順序や言葉づかいにトークと違う部分も多々ありますがご容赦ください。(レポート:豊田芳州)

●α波を発する富士山の写真

 ビート・タケシのTV番組で、α波が取り上げられていました。(α波とは、覚醒安静時に脳から発する波形で、快適な環境に置かれているバロメーターになるといわれる。) α波が多く出る入浴として、ユズ風呂、オレンジ風呂、ドクダミ風呂などが挙げられています。国際医療福祉大学大学院の前田教授の報告では、α波がよく出るのは景観(風景)写真だという。Hp1366p7014177特に富士山の写真を見るとα波が出るということです。昔、銭湯には富士山の絵が描かれていたのを思い出します。風呂に入って富士山を見ることは理想的な環境だったのです。当時の関係者は富士山の効用を知っていたのでしょうか。(写真上右は田中宏明会員の代表作「乙女富士 一年三百六十六変化」)

●乙女峠からの定点観測撮影

 はじめは料理の写真を撮っていました。その余暇に箱根にいらした方々に箱根を紹介できる写真が撮れたらと考えていました。1994年、あるきっかけで乙女峠を知り、6年間毎日、乙女峠へ通いつめました。雨の日も風の日も、雪の日も。周りの人たちは私を不審に思ったようでした。そのとき、「しめた」と思いました。周りが「おかしい」と言ったらチャンスがあると思っています。乙女峠は味気ない場所です。御殿場の町の上に富士山が見えるだけです。御殿場の町には送電線が見え、撮影条件は決して良くありません。だからこそ燃えるものがありました。電線を目だたなくする被写体条件と撮影テクニックを研究しました。

●絞りとシャッターで色を出す

 赤富士を撮ろうとして、初めは完全に失敗しました。それから撮影の積み重ねていろいろな撮影データを得ました。撮影は、もちろんフィルムで行っいましたが、Hpp7014182フィルターを使わないで、絞り値とシャッター速度だけで色を出すデータを見つけました。絞りにより写る色が変わるのです。絞りF8は黄富士を撮影するポイントになりました。富士山を照らす光には、時間帯により青、赤、黄色(田中会員は熱温度と言っている)があります。紅富士を黄色光の時間帯に撮影すると黄富士に写ります。夜景では約30秒という露出時間が成否のネックになるのを知りました。(写真上は黄富士)

●撮影は心に汗をかく

 写真というのは、話しにくい対象です。ある人との会話で、「自分は現場で汗をかくんだから、事務や営業は脳みそに汗をかけ」と言ったことがあります。では写真はどうなのだろうか。写真は見える被写体しか写らないが、それにプラス・アルファーするのが撮影です。それは、すなわち無形の世界です。撮影は心に汗をかくことと言えないでしょうか。

Hpp7014189●五彩富士の着想

 春夏秋冬と112か月という言葉にこだわりました。「つるし雲」「笠雲」「雲海」「雪」など12か月シリーズを15ぐらい撮り進めました。ちなみに、8月にも富士山には雪が降ります。しかし、12か月は展示や販売で負担であるうえに、観客がなじまないのではないか思い、5点ぐらいのほうが私の顔になりやすいと考えました。そこで、「五彩富士」(写真上右)を思いつきました。五彩とは、青、赤、黄、白、黒を意味します。これを核にしてプラス・アルファ―して写真を発表すればいいのではないかと考えました。

Hpp7014156_4 ●春夏秋冬が自分の周りを廻る

 一般には、富士山の前景に季節感を盛り込むことを定石とする写真がある。多くの写真家は季節に合わせて撮影地を移動して、茶畑、桜、柿などの季節感を撮り込む。しかし、乙女峠からの撮影では何も撮り込めない。富士山の表情のみで季節感を表現しなければならなかった。この難問にチャレンジしました。できなかったら自身の限界だと思いました。乙女峠での定点観測撮影では、春夏秋冬が自分の周りを廻っているようだった。

●作品は自分の子どもと思う

 写真作品の価格ですが、プリント代、装丁代などの実費の3倍と決めています。半切が約7万円です。これぐらいで、写真展のギャラリー代ぐらいは出ます。赤字になっても、作品は財産だと思えばいいのです。撮った写真は発表・展示すべきだと思います。Hpp7014140世間にさらして、たたかれて、強くなっていく。自分の子どもと同じでしょうか。(写真右はリレートーク会場風景)

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