写真論

2010年10月23日 (土)

第5回 リレートーク 『二つの世界』前編

Hpp9224674_2「写真と俳句」 三宅善夫

 三宅会員は40~50代に約10年間、証券マンとしてイギリスに滞在されました。その間、英国の伝統的な生活と正統的なつきあいを体験していらっしゃいました。帰国してから本格的に写真と俳句を学ばれたそうです。リレートークでは、三つの比較論についてお話しいただきましたが、ここでは「写真と俳句」および「英国と日本」の比較論とアナロジーについて要旨を掲載します。前編は『二つの世界…写真と俳句』です。三宅会員の話をうかがうと、俳句を詠むことにより被写体(対象)と写真家の関係がより親密になるように感じました。(レポート:豊田芳州)

 写真にかかわるきっかけは、長兄がライカとローライコードを持ち、自宅に暗室を造っていたので、その影響が強くあります。その後、証券会社の国際部で外人の接待、海外出張などの記録としてカメラを使ってきました。1985年10月に帰国したとき、社団法人・日本証券経済倶楽部に入会し、そこの文化活動で写真と俳句の会に入りました。写真は、富士写真フイルムの高石泰次先生とコニカの松野正雄先生(皇室写真家)の指導を20年間受けました。Hpp9224670人物と祭りが中心です。神田明神、浅草三社、鳥越神社、博多山笠、長崎くんちをメインにして、祭りの人間関係を大切にして、幅を広げず深く撮影してきました。

 俳句は、学生時代に俳句ができないと卒論をうまく書けないと言われて始めました。1985年の帰国当時、自己流でしたが本気で写真俳句を始めました。NHKの番組より早い時期だったと思います。俳句は石川黛人先生に指導たまわりました。1枚の写真に一つの句を添えますと、撮影の背景、心理状態などが走馬灯のように浮かんできます。 2007年、NHKは「フォト575クラブ」という番組を開始しました。「かけがえない一瞬を、忘れたくない思いを、写真と言葉で描いてみませんか」というキャッチフレーズでした。「松尾芭蕉はカメラマンだった」とNHKの番組で解説がありました。芭蕉の鋭い観察力と洞察力はカメラマン的であるということなのでしょう。また、俳句と写真のアナロジーを伝えたかったものと思われます。

 写真と俳句の共通性に「現場主義」が挙げられます。どちらも情景を前にしてシャッターをきり、句を詠む点は同じです。私は自分で見てきた、訪ねてきたところ以外は詠まないことにしています。こたつに入って、俳句歳時記を見ながら上と下をいろいろ組み合わせると立派な句ができますが、そういう句は、すぐ先生にばれます。Hpp9224652_2写真と同様に、最近はいつもカメラを持っているので、どこへ行っても写真を撮りながら良い句ができるナ思っていても、帰りには忘れています。 あまりにたくさん撮影するからでしょうか。俳句では写生と言いますが、写生とは被写体を自然に正確に撮影することに匹敵すると思います。次に、家に帰ってパソコンで明るさやトリミングを調節します。これは写真の応用技術になり、俳句の推敲に匹敵すると思います。しばしば、先生に指導を受けますと格調の高い句に完成します。写真でも後で調整しないと写真のクウォリティーは撮ったときのままで終わってしまうと思います。

 写真と俳句に共通する大事なことは、心ではないかと思います。俳句は、何をどう感じたのか、心理描写で心の動きを詠み込むことが必要ですが、写真も迫真的な雰囲気や感情など人々に訴えるような心の状況が込められた写真を撮りたいと思います。撮影会に対して、俳句では吟行というのがあります。例えば、10人ぐらいで場所を選んで出かけていっていくつか句を詠みます。お昼に集合してそれぞれ5句ずつ提出して、50句を合評して順位を決めます。その中に自分の句が入っているか否か、厳しい判定が下されます。俳句には、たいへん競争的でタフな一面もあります。  写真と俳句を一体化した権威ある元祖は、伊丹三樹彦(1920年~)という方です。1969年(昭和44年)に「ヨーロッパ吟旅」を実施し、帰国後、写俳運動を開始しました。40か国で写俳活動を続けていらっしゃるそうです。

私の写真俳句をご披露します。(スペースのつごうで一部を掲載します。写真はクリックでポップアップします)

鳥の目に 合焦マーク 寒桜

「合焦マーク」という言葉は、俳句しかやらない人にはわかりません。俳句の練達な方々には、「合焦」は良い言葉という評価を得ました。俳句にも「ピント合わせ」があるということでしょうか。Hpp9224687_2

教え子の 美しくあり 五月晴れ

今年の長崎くんちの当番が諏訪神社へお参りにいった帰りを撮影したものです。モデルの女性は知り合いで、活水女学院の卒業生です。句会で評価されたとき、状況を聞かれたので、キャビネ判のこの写真を見せて納得してもらいました。

啄木忌 白砂に跳ねる 少女あり

撮影会で、下田の海岸へモデルを連れていって撮影しました。暖かい春の海の情景を詠みました。「啄木忌」(4月13日)は春の季語です。

夕焼けに 明日の幸せ 祈りつつ

私が撮影したモデルさんでは、この人がいちばん美人でした。現在はアメリカへ行って女優になっています。伊豆の撮影会で、シャンパンを飲む場面を撮りました。渡米することがわかっていたので、祝福の気持ちで詠み、撮影しました。Hpp9224692

厳かに 献茶の儀式 若葉風

去年の神田明神の献茶式です。撮影をお願いいたところ、宗匠さんから正客の席を与えられました。移動してもかまわないと言われましたが、静寂の中でシャッター音が気になり、緊張してあまり撮れませんでした。

風車 百万弗の 笑顔かな

私の孫の写真です。これほどの笑顔はめったに見たことがありません。風車は高校の体操部の先生からいただきました。竹細工が得意な方で、いろいろなところへ竹細工を寄付していらっしゃいます。現在100歳です。この写真も私の思い出になっています。

夏の朝 輪島に光る お母さん

モデルはツルモトタケコさんという方で、朝市の華です。子どもがそばにいました。「伯父も写真をやっています。がんばってください」と励まされて別れました。品物の荷札に住所が書いてあったので、キャビネ判を送ったところ、お店(夜は飲み屋になる)のお客が「良い写真だとほめてくれました」というハガキが来ました。そこで、クリスマスに引き伸ばしたプリントを送ったところ、私の事務所に魚のトロバコが届きました。

| | コメント (0)

2010年7月26日 (月)

第4回リレートーク『写真撮影は心に汗をかくこと』

田中宏明会員の写真観

Hpp7014137_3 第4回目のリレートークが7月1日に開催された。担当は田中宏明会員だ(写真左)。ライフワークである富士山写真のアルバムなどを提示しながら、その撮影現場で得られた写真に関する体験とノウハウをお話しいただいた。独特の写真観からは、多くの含蓄ある報告と提言が展開された。一部を省略し、かつ要約したので、話の順序や言葉づかいにトークと違う部分も多々ありますがご容赦ください。(レポート:豊田芳州)

●α波を発する富士山の写真

 ビート・タケシのTV番組で、α波が取り上げられていました。(α波とは、覚醒安静時に脳から発する波形で、快適な環境に置かれているバロメーターになるといわれる。) α波が多く出る入浴として、ユズ風呂、オレンジ風呂、ドクダミ風呂などが挙げられています。国際医療福祉大学大学院の前田教授の報告では、α波がよく出るのは景観(風景)写真だという。Hp1366p7014177特に富士山の写真を見るとα波が出るということです。昔、銭湯には富士山の絵が描かれていたのを思い出します。風呂に入って富士山を見ることは理想的な環境だったのです。当時の関係者は富士山の効用を知っていたのでしょうか。(写真上右は田中宏明会員の代表作「乙女富士 一年三百六十六変化」)

●乙女峠からの定点観測撮影

 はじめは料理の写真を撮っていました。その余暇に箱根にいらした方々に箱根を紹介できる写真が撮れたらと考えていました。1994年、あるきっかけで乙女峠を知り、6年間毎日、乙女峠へ通いつめました。雨の日も風の日も、雪の日も。周りの人たちは私を不審に思ったようでした。そのとき、「しめた」と思いました。周りが「おかしい」と言ったらチャンスがあると思っています。乙女峠は味気ない場所です。御殿場の町の上に富士山が見えるだけです。御殿場の町には送電線が見え、撮影条件は決して良くありません。だからこそ燃えるものがありました。電線を目だたなくする被写体条件と撮影テクニックを研究しました。

●絞りとシャッターで色を出す

 赤富士を撮ろうとして、初めは完全に失敗しました。それから撮影の積み重ねていろいろな撮影データを得ました。撮影は、もちろんフィルムで行っいましたが、Hpp7014182フィルターを使わないで、絞り値とシャッター速度だけで色を出すデータを見つけました。絞りにより写る色が変わるのです。絞りF8は黄富士を撮影するポイントになりました。富士山を照らす光には、時間帯により青、赤、黄色(田中会員は熱温度と言っている)があります。紅富士を黄色光の時間帯に撮影すると黄富士に写ります。夜景では約30秒という露出時間が成否のネックになるのを知りました。(写真上は黄富士)

●撮影は心に汗をかく

 写真というのは、話しにくい対象です。ある人との会話で、「自分は現場で汗をかくんだから、事務や営業は脳みそに汗をかけ」と言ったことがあります。では写真はどうなのだろうか。写真は見える被写体しか写らないが、それにプラス・アルファーするのが撮影です。それは、すなわち無形の世界です。撮影は心に汗をかくことと言えないでしょうか。

Hpp7014189●五彩富士の着想

 春夏秋冬と112か月という言葉にこだわりました。「つるし雲」「笠雲」「雲海」「雪」など12か月シリーズを15ぐらい撮り進めました。ちなみに、8月にも富士山には雪が降ります。しかし、12か月は展示や販売で負担であるうえに、観客がなじまないのではないか思い、5点ぐらいのほうが私の顔になりやすいと考えました。そこで、「五彩富士」(写真上右)を思いつきました。五彩とは、青、赤、黄、白、黒を意味します。これを核にしてプラス・アルファ―して写真を発表すればいいのではないかと考えました。

Hpp7014156_4 ●春夏秋冬が自分の周りを廻る

 一般には、富士山の前景に季節感を盛り込むことを定石とする写真がある。多くの写真家は季節に合わせて撮影地を移動して、茶畑、桜、柿などの季節感を撮り込む。しかし、乙女峠からの撮影では何も撮り込めない。富士山の表情のみで季節感を表現しなければならなかった。この難問にチャレンジしました。できなかったら自身の限界だと思いました。乙女峠での定点観測撮影では、春夏秋冬が自分の周りを廻っているようだった。

●作品は自分の子どもと思う

 写真作品の価格ですが、プリント代、装丁代などの実費の3倍と決めています。半切が約7万円です。これぐらいで、写真展のギャラリー代ぐらいは出ます。赤字になっても、作品は財産だと思えばいいのです。撮った写真は発表・展示すべきだと思います。Hpp7014140世間にさらして、たたかれて、強くなっていく。自分の子どもと同じでしょうか。(写真右はリレートーク会場風景)

| | コメント (0)

2010年4月14日 (水)

田中宏明会員の写真活動

写真・武道・料理・茶道Hpp4055646_2

 英国王立写真協会 日本支部のメンバーは多士済々だ。それぞれをご紹介できればと思っている。本ページでは田中宏明会員の作家活動についてレポートしよう、ご自宅を訪問して取材させていただいた。(レポート:豊田芳州)

 初めにもてなしていただいたのは抹茶だった。これは田中宏明会員のパーソナリティーを表している。田中会員(以下、田中さんと呼ばせていただく)は風流人である。しかし、武道家でもあり、板前でもある。

Hpp4055610_2 田中さんの原点は柔道だという。4歳ごろから柔道を始め、厳しく鍛えられた。しばしば竹刀でたたかれたという。大病を患ってはいるが、いまだ風貌は武道家である。Hpp405562020年前、箱根の保養所の管理を任され、たくさんの調理を経験した。そこで、景観料理という新境地を切り開いた。料理の盛り付けでいろいろなことを表現する。日本の節句や都道府県の代表的な風景などだ。どちらも、制作にとりかかる前にデッサンで構想を練る。写真上左は節句「七夕」(たなばた)のデッサンと景観料理のアルバムだ。Hpp2161345_22月に開催した第8回王立写真協会日本支部展に出展した景観料理写真は、北斎の絵をモチーフにした『北斎』と、節句シリーズの『端午の節句』だった(写真左) 。

 田中さんの代表作は、『乙女不二 一年三百六十六変化(へんげ)』である。箱根の乙女峠から定点観測撮影した作品群だ。まず、富士を「不二」と書いたところに妙がある。「三百六十六」は、うるう年で1年をカウントしているからだ。Hp365p4055607タイトルの意味は、「二つとない366日の富士山」という意味だろう。コンタクトプリントのように構成されたアルバム(縮小版)を見せていただいた(写真右上は11月の変化)。ときどき同行される奥さまからうかがったところによると、田中さんは、どんなに寒くても、暗いときでも車の外でシャッターチャンスを待つという。Hpp4055630筆者も、氷点下で富士山を撮影した経験があるが、シャッターチャンスを待つときは車中で過ごす。ほとんどの写真家はそうである。氷点下でシャッターをきらずにカメラのそばに立っているのはつらい。田中さんにとっては、外でシャッターチャンスを待つことに意義があるのであろう。被写体と対峙するときの緊張感は筆者もなんとなく共感できるが、田中さんの真意はわからない。武道家としての真骨頂が表れているのではないか。そして、完成したのが『乙女不二 一年三百六十六変化』である。おそらく、だれもが取り組んだことのない大作だろう。(写真左上は“月下富士”を掛け軸にしたもの)

 今までに何回も個展を開催してきた。松戸・伊勢丹、銚子・十字屋、津田沼・丸善など、会場はいずれも地元千葉県のデパートや書店である。店舗が会場を提供するのには、作品が売れるという前提がある。売れない作家にはギャラリーを提供しない。田中会員は売れる写真を目ざしたのである。フランスでは写真と絵画は同格だという。日本の写真環境もそうなってほしいと願っているが、いまのところ、自身の率先垂範しかないのである。地元開催にもこだわりがあるようだ。『乙女不二 一年三百六十六変化』は、昨年、地元柏市の「アートラインかしわ2009」で展示された(2009年11月6日~30日 乙女富士写真展工房西山荘 ☎04-7171-3230)。Hp

Hpp4055643                         

 自宅には「春夏秋冬の間」(写真右)という部屋がある。富士山の四季を掛け軸や屏風に装丁して展示されている。ギャラリーというよりは茶室のようだ。田中さんによると、戦国時代、武士は出陣に備え主君より一服の茶を進呈されたという。いざ出陣は、「いざ撮影」に通じるところがあるのかもしれない。写真を侘茶と融合させるところに田中さんの心髄がある。

| | コメント (0)

2010年2月10日 (水)

写真展 『The New Horizon 新たな展望』

第8回 英国王立写真協会 日本支部写真展Hpdmimg

 日本支部は、毎年、写真展を開催している。毎回、テーマを設定し、会員それぞれがテーマを解釈して作品を発表している。今年のテーマタイトルは『The New Horizon 新たな展望』だ。これは、英国本部の第152回 国際プリント写真展の課題テーマだった。日本支部の林喜一会員がスポンサー特別賞を受賞したので、日本支部全体でこのテーマに取り組むことにした。しかし、簡単なテーマではない。そこで、取り組むときのマニュアルとして『未来を撮る…新たな展望とは』(省略)を作成し、ニュースレターにも公開した。先日は、支部会員有志が集まり、写真展の構成を検討し(写真下)、Hpp1152327作品を次の3つのカテゴリーに分けて展示することにした。可能性への挑戦 Challenge to Possibility/宿命の開発 Fated Development/精神の創生 Mental Creation である。各カテゴリーの代表作を掲載する。

Hpdm 会期:2010年2月11日(木)~16日(火) 11:00~19:00 会場:フォトエントランス日比谷(アクセスは右のマップをクリック)

11日夕刻、オープニングパーティーがあった。Hpp2111177

                           

Hprpsjp2101166_2Hprpsj10p2101164_2

        

       

                       

可能性への挑戦Hp_2

『鳥 瞰』 視点と視野 本村政治

                                         

              

              

宿命の開発Hp_3

『条』   渡部 誠

                        

              

              

               精神の創生Hpgideon_a_drop_dripping

『A Drop, Dripping』 Gideon Davidson

| | コメント (0)

2010年1月14日 (木)

第2回リレートーク『写真とパースペクティブ』

 12月17日、第2回リレートークが「代官山花壇」で開催された。講師の川村会員から要旨をレポートしていただく。

『写真とパースペクティブ』 川村 賢一 ARPS

 今回は、「写真とパースペクティブ」というテーマで、パース原論を中心にお話した。

 まず、「パースとは何か」を紹介し、①遠近法(透視図)と、②遠近感(奥行き感)について説明する。写真は、幾何学的原理において、遠近法と全く同じである。

Hp_2 次に、遠近法を切り口とした美術史の大きな流れを紹介する。ルネサンス期に研究が進んだ遠近法によって写実的絵画表現が確立され、光学的な研究もともなって、「カメラ オブスキューラ」と呼ばれる暗室空間装置/遠近法スケッチ用具が考 案され、多くの画家に愛用された。この基本構造は一眼レフカメラとほとんど同じで、この「カメラ」が今日の写真機の語源となった。しかし、実際に写真が発明されるのはさらに200年も後のことだ。遠近法は、日本と西洋の美術史に大きく関わるが、18世紀前半の写真の発明は、さらに近代絵画の形成に多大な影響を及ぼすこととなる。絵画表現は、遠近法による写実的表現から、より自由な表現を求め、20世紀のモダンアート運動へと大きく発展する。その間、遠近法はさらに実用化され、建築の設計プロセスで重要なツールとなった。

 この後、建築写真と遠近法の密接な関係について紹介する。遠近法には、XYZ軸の軸線の消点の数で、1点パース、2点パース、3点パースの3つがある。建築写真では5つのポイントがあるが、その中では重力軸との関係をきちっと表現する「安定感」が極めて重要であり、これが線的遠近法を重視する所以でもある。

Hp_3 最後に、「遠近感とは?」 遠近感の違いはどこから来るのかについて紹介する。同じ空間を、広角レンズで撮影した写真と、望遠レンズで撮影した写真で遠近感の違いを見ると、広角レンズで被写体に近づくほど、遠近感が強調され、望遠レンズで被写体から遠ざかるほど遠近感は圧縮されることが分かる。ここで重要なのは、「遠近感は、対象空間と立点(撮影ポイント)との距離によって決まる」ということだ。望遠レンズで圧縮効果が出るのは、遠くの奥行きが圧縮された部分を望遠鏡で拡大して見ているということに他ならない。

Hprimg6947_cd_2 さらに、「表現写真」の場合は、不安感や驚きの感情表現など、何を表現したいかによっては、あえて空間を歪ませる表現も手法としてよく使われるなど、いくつか補足説明を紹介して終了した。また機会があれば、もう少し写真作品をお見せしながら、パースペクティブを検証できればと考えています。

| | コメント (0)

2009年11月 2日 (月)

第1回 リレートーク 『時間を撮る』と『Xを追う』

 1015日、第1回リレートークが開催された。リレートークとは、会員それぞれが体験したこと、研究・考察したこと、得意な分野などをテーマにして発表し、会員相互に質疑を交わし、写真撮影の糧にしようという催しだ。1回目は本村政治会員と豊田芳州会員が講師を務めた。本村会員の『Xを追う』は、某有名選手の練習や生活を追跡したレポートで、日本支部(RPSJ)会員にみに公開された秘蔵写真集だ。豊田会員の『時間を撮る』の要旨は以下のとおり。

『時間を撮る』 豊田芳州

 私は、撮影のモチーフを8つに分類している(現段階)。①表情・雰囲気 ②関係 ③発見 ④時間 ⑤光 ⑥形 ⑦カラー ⑧質感 の8つだ。リレートークでは、その中の④について取りあげた。Hppa121420_2

 時間は人間特有の高度な概念であり、人間の生活にとって無視できない。多くの芸術的感動にも深くかかわっている。映画、音楽、演劇、舞踊、文学などは時間芸術と言える。写真は、映画やテレビと違って『時の流れ』はない。二次元の平面である。写っている被写体は、ほとんどが一瞬の出来事であり、その断片である。しかし、多くの優れた写真を分析すると、時間がモチーフになっている。

 写真に記録される被写体は常に現在である。しかし、私たちは写真から過去や未来を感じとることができる。写真を鑑賞(観賞)したとき、被写体の中に思い当たるふしや、想像できること、予測できることなどがあるからだ。それが過去だったり未来だったりするのである。読みとることで撮影者と共感し、納得する。撮影者とだけでなく、人間として、社会人として、家族として、共通の環境や土壌に育った人びとと共感できる。人間には共通の体験があるのだ。すなわち、人は『時の流れ』に敏感であり、心を動かされると言える。

 しばしば過去は現在の原因であり、現在は未来の原因である。現在の被写体を結果や原因として撮ることに意義がある。「過去を撮る」モチーフならば、疲れる、枯れる、老境、記念()、思い出、ノスタルジア/侵食/風化/航跡、ゴールなどが考えられる。「未来を撮る」モチーフなら、夜明け//若さ/つぼみ・若芽/不安/不可解/未熟/若さ/赤ちゃん/若者/希望・夢/スタート/成人式などを挙げることができる。どちらも、「現在」を撮りながら、「過去」や「未来」を感じさせているのである。(写真上参照 大木の立場に感情移入すれば遠い過去を感じるし、幼木の立場に立てば長い未来を予測できる)

 もちろん「現在」も重要なモチーフだ。満開/絶好調/絶好のチャンス/ピンチ/新製品/ファッション/最先端などは、現在の状況に敏感な人間の本能に合わせたモチーフだ。「季節感」や「時刻」も時間の概念であり、モチーフになるのは説明を要しないだろう。「瞬間」は短い時間を指し、シャッター機構をもったカメラには得意のモチーフだ。自然現象、人の顔の表情、運動のフォーム、昆虫の飛翔などは瞬間のモチーフになる。

 被写体を前にして『時間を撮る』というモチーフで対応することはイメージやテクニックの着想が生まれ、秀作に結び付く可能性が高くなる。

| | コメント (0)